上達の指南

松本武久七段の「この布石にこの定石」

(1)狭い所に閉じ込め攻める

(寄稿連載 2015/04/28読売新聞掲載)

 アマチュアの皆さんは、さまざまな形で布石や定石の勉強をされていることでしょう。布石と定石を個別に勉強するのもよいですが、布石、すなわち周囲の配石を考えながら定石の選択を考えると、より一層効果が上がります。

 【テーマ図】 黒5と中国流に構え、さらに上辺に7、9と展開すると強力な勢力になってきました。白10と小ゲイマにかかったのは当然でしょう。
 黒はどのような定石を選択したらよいでしょうか。

 【1図】 厚みを生かして黒1とこすみつけるのが絶対の一手。白2の立ちから4の開きまで定石です。
 ここで黒5のケイマが黒の勢力を働かす好手です。白6のケイマに黒7へ先着し、黒は理想的な構えです。黒5でAの一間飛びは、白Bに飛ばれてやや甘いでしょう。
 この定石は、狭いところに閉じ込めながら攻めるのに有力で、簡単には治まらせない打ち方です。ただし、白Cの三々が残るので隅はまだ確定地とは言えません。

 【2図】 黒1の一間バサミはよく打たれますが、白2の三々入りが見え透いています。黒3と押さえ、白4以下黒7まで封鎖するのは定石のひとつですが、▲が重複形になります。続いて白は8から10と下辺に展開してよい調子です。
 黒が定石の選択を誤った典型的な例と言えましょう。

●メモ● 松本七段は長崎県出身。1980年生まれ。趙治勲二十五世本因坊門下で、金秀俊八段、鶴山淳志七段らと内弟子生活を7年送った。「たくさん打っていただき、勉強になりました」。97年入段、2008年七段。06年、第31期新人王戦優勝、棋道賞新人賞受賞。14年、通算400勝達成。

【テーマ図】
【1図】
【2図】