上達の指南
(3)シマリと厚み 一体の構え
(寄稿連載 2015/05/19読売新聞掲載) プロが打った布石や定石を勉強するのはよいことです。ただ、注意しなければいけません。プロは布石の一手一手、また定石を選択する際、1目でも2目でも得を図るためギリギリのところまで追求します。これを無理にまねすると、大けがをしかねません。多少ぬるいと思っても、手厚い道を選び戦いに備えることが大事です。
【テーマ図】 黒1、3、5の構えに、白が二連星から6と小ゲイマにかかりました。プロの対局で多く打たれ、はやっている布石のひとつです。
黒9のカカリと白10の交換をした後、黒は右上隅をどのように打ちますか。
【1図】 黒1のハサミが逃がせない一手で、白2のコスミに黒3、5と封鎖するのが絶対です。白6のハネ出しに黒7から9と抱えます。黒はシチョウ有利が条件となります。
白10のシチョウ当たりに黒11と備えて一段落しますが、黒はこの厚みと右下隅のシマリがマッチして理想的な構えです。
【2図】 白が封鎖を嫌うなら、黒1のハサミに白2、4とツケ引く打ち方もあります。黒は5のカケツギが好形で、白6のコスミに黒7と開いておきます。これも右下のシマリと右辺の連係がよく、不満のない形です。
【3図】 白1のスベリに黒2の受けは無難ですが、白3と開いて安定しては白の注文です。右下のシマリの威力が半減して面白くありません。
●メモ● 松本七段の棋風は力戦派と見られている。確かに戦いは嫌いではないが、自身は結構、地に辛いタイプと思っている。ただ、形勢が悪くなったり、利かされることを嫌って、やむなく戦いを起こすことが多いという。「戦いをためらい、敗れて悔いが残るのは嫌です」