上達の指南
(4)援軍を背景に強く攻める
(寄稿連載 2015/05/26読売新聞掲載) 棋聖リーグがたけなわです。今期からリーグ枠が増え、若手にはうれしいことです。私は残念ながら予選トーナメントで敗退し、リーグ入りはなりませんでした。来期は頑張ります。
【テーマ図】 黒1、3の向かい小目から5と中央に構える変則的な布石です。白6のカカリに黒7の下ツケは厳しい。これをイのケイマは白ロ、黒ハ、白9、黒ニ、白ホで甘い。白8、10のナダレに黒はどの定石を選ぶべきでしょうか。当然、黒5の援軍を考慮に入れます。
【1図】 黒1とはねて小ナダレ定石に持っていくのが正解です。白2の切り以下、必然の運びで白6に黒7の伸びが強手です。白は16とこすむほかありませんが、このとき▲の援軍が働いてきます。黒17の押しから19、21の二段バネが決め手。黒の強襲に白はツブレ形に近いです。
【2図】 黒1のハネに白2の当てから4と戦いを回避するなら、黒5のツケが急所になります。これを単に7に伸びるのは、白5の並びで白も形が整ってきます。
白6の引きに黒7と引けば、白は打ちようがない形です。
【3図】 黒1の伸びは緩みです。白2の当てから4のカケツギで瞬く間に白に形ができてきます。ここで黒5の割り打ちは手遅れで、白6から8に詰められ、一気に攻守が逆転します。
黒1で3につぐ定石もありますが、白Aに伸びられ、黒Bと受けたとき、白4にかけつがれ、黒不十分です。
(おわり)
●メモ● 松本七段は米メジャーリーグのイチロー選手の大ファンで、よくテレビで観戦している。イチロー選手の野球に取り組む姿勢、努力し続ける強い気持ちに勇気づけられるという。イチロー選手が活躍した日は気分がよく、碁の勉強にも力が入る。「いつもの3割増しくらい集中できる気がします」