上達の指南

松本武久七段の「この布石にこの定石」

(2)重複形に導くテクニック

(寄稿連載 2015/05/12読売新聞掲載)

 最近、プロの世界では序盤から激しい戦いが始まる碁が多く見られます。アマチュアの方が最新のプロの布石を勉強されるのも結構ですが、時には昭和の布石を並べ返すのもよいと思います。当時の布石は穏やかな立ち上がりから大場を打ち合い、時には急場に向かうなど布石の基本となる要素がたくさん見られます。

 【テーマ図】 黒7のカカリ一本から9の大ゲイマジマリは足早な打ち方です。白10の二間開きに黒は11と一間に手堅く締まりました。
 白12と三々に入ってきたところで、黒はどのような定石を選ぶべきでしょうか。

 【1図】 黒1と押さえ、白2のハイに黒3、5の二段バネがぴったりです。白は6の切り以下10と取るほかなく、黒11まで△の1子が厚いところにくっついた重複形となっています。
 黒5の二段バネがポイントで、これを6に伸びるのは白5とはわれて大甘です。

 【2図】 白1とついで隅を頑張るのは、黒2、4の突き抜きがたまりません。黒6のハネから8となって、白は壊滅状態です。隅は黒Aの下がりで死にも残っています。

 【3図】 黒1の方向から押さえるのは不適切です。白2のハイ以下8のツギまで、白に実利を取られます。
 黒は9のカケツギまで厚みを築いたものの、白10に開かれてその厚みが働きません。

●メモ● 松本七段は、三村智保九段の「詰研」に参加して3年ほどになる。あまり難しい詰碁をやって来なかったので、研究会ではいつも苦戦している。研究会での点数は進歩していないが、実戦で筋を思いつきやすくなったという。「詰碁はいいです。皆さんもぜひやってください」

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】