上達の指南

三村智保九段の「工夫する子は強くなる」

(1)無理攻め 失敗して学ぶ

(寄稿連載 2014/03/11読売新聞掲載)

 子どもたちを教えるようになって7年目になります。指導者としては試行錯誤の連続ですが、子どもたちの碁を見て新鮮な刺激を受けることもあります。

 【テーマ図】 白1と打ち込まれた場面で、黒がどういう打ち方をするかに注目です。黒2のコスミにはびっくりしました。中央にも左下にも逃がさない態度です。
 白3のツケでさばこうとするのを、黒4の急所から6と迫って、全部取るつもりです。子どもならではの直線的な攻撃です。本来は無理な作戦なのですが、新鮮なものを感じました。私が忘れてしまった元気いっぱいの発想です。

 【1図】 丸取り作戦はリスクが高いですから、少し強くなればむちゃはやらなくなります。黒1のノゾキから3と下がって、下辺の実利を確保しながら攻めるのが正しいでしょう。みなさんにも、こちらがお勧めです。

 【2図】 実戦です。白1の曲げから3のとびを決めて、5とハザマを空けたのが筋です。黒6から攻め続けましたが、白11の押さえから13と伸び、17まで黒2子を取れば生きています。下辺の黒ががらがらになってしまいましたが、失敗から学ぶことが多いものです。
 黒の無理攻めでしたが、こういうのがダメだとは直接言わないことにしています。大人から言葉で教わっても身に着きません。自分でやってみて、納得するのが一番なのです。

●メモ● 三村九段は福岡県出身。故藤沢秀行名誉棋聖門下。三村芳織二段は夫人。1969年7月生まれ。82年少年少女大会で優勝し中学生名人。86年入段、2000年九段。90年名人リーグ入り。01年棋聖リーグ入り、6期連続在籍。03年NHK杯優勝。04年本因坊リーグ挑戦者決定戦進出。

【テーマ図】
【1図】
【2図】