上達の指南

三村智保九段の「工夫する子は強くなる」

(4)常識にとらわれない発想

(寄稿連載 2014/04/01読売新聞掲載)

 本で見た手や強い人に教わった通りに打っていれば、間違いはありませんが、それだけではなかなか上達しないものです。打ちたいところに打って、工夫を重ねることが大切です。

 【テーマ図】 △とかかられた場面です。黒4と受ければ普通ですが、白に上辺に開かれると白模様が深くなります。それを嫌って黒1とはさんだ気持ちは分かります。白2の飛びに、黒3と開いて上辺を連打したのが斬新な発想です。白4のケイマで止められるのはつらいのですが、上辺の方が大きいと判断しています。常識にとらわれないのがいいですね。

 【1図】 私なら、黒1と割り打つことを考えます。白2の詰めなら黒3と開く余地があります。この方が▲が傷まないのですが、実戦も悪くありません。

 【2図】 黒1、3とツケ引いて隅で治まりました。白6の詰めには黒7と飛んで丁寧に応じます。白10の詰めと黒11の締まりを交換してから、白12と中央に浮かべたのが感じのいい手です。上辺の黒を狙いながら、右辺を広げています。互いに工夫し合って、出来のいい碁でした。
 子どもたちを強くするのは大変です。なかなか自分の知識を伝えることができません。試行錯誤の毎日です。みなさんも自分の棋力が上がらないとお悩みかもしれませんが、工夫しながら一歩一歩進みましょう。楽しみながら打つのが一番だと思います。
(おわり)

●メモ● 中国や韓国では子どもの囲碁ブームが続く。層が厚いだけにトップも強くなる。三村九段は、日本の子どもたちも負けないよう上達させたいと思っている。子どもが知恵を絞ることで強くなっていくことを実感し、大人にも自分なりの工夫を勧める。考えなしに打つのでは上達しないという。

【テーマ図】
【1図】
【2図】