上達の指南
(2)断点めぐる元気なケンカ
(寄稿連載 2014/03/18読売新聞掲載) 自分なりに考えることは大切です。教わったまま丁寧に打つだけでは、飛躍するのは大変です。みなさんも、ここに打ちたいと感じたらやってみるのが一番です。負けたとしても、工夫している過程が大切なのです。
【テーマ図】 右下の黒はイの断点が気になります。黒ロのケイマで守るのは堅過ぎるかもしれませんから、黒ハのハネで頑張るのが妥当かもしれません。
ところが黒1と打ち込んで行きました。じつは、これがけっこういい手なのです。黒はここで事を起こして、イの断点を自然に補う展開を狙っているのです。こういう工夫は見ていて楽しいものです。
【1図】 黒としては、白1の上ツケに黒2とはね込んで、黒8の飛びまで渡る図を描いています。こうなればイの断点の脅威は解消されます。もちろん、白はこれでは不満ですから、なにかやっていきます。
【2図】 白5と押さえ込んだのが白の工夫です。
黒6、8の当てツギで白も怖いのですが、白9のボウシから11とつけて、がんがんやっていきます。自分のイの断点は、攻めながら補ってしまうつもりです。そして、相手のロの断点はまだ狙っています。
互いの切りをにらみながら、元気いっぱいにケンカしています。すぐケンカになるのは子どもの碁の特徴ですが、厳しい方向に行くのは、見込みがあると思っています。
●メモ● 三村九段は2006年に通算600勝を達成している。新人王戦や新鋭トーナメントでの優勝経験もある。各リーグなどで活躍してきたが、本人はもちろん納得していない。周囲の期待も大きい。44歳、大きなタイトルを取るチャンスは十分ある。子どもとともにまだまだ成長。