上達の指南

三村智保九段の「工夫する子は強くなる」

(3)はつらつと生きのいい碁

(寄稿連載 2014/03/25読売新聞掲載)

 妥協しないでいっぱいに頑張るのが、成長している子どもたちの特徴です。頑張り過ぎて失敗しても、なにがしか身につけてくれればいいのです。みなさんも、やり過ぎる傾向があるなら、強くなっている証拠かもしれません。ただ、いつかはバランスを考えるようにならないと、勝率は上がりませんよ。

 【テーマ図】 黒1のハネは張りのある手です。白2の切りも当然でしょう。黒3と伸び切ったのがなかなかの手でした。大人の感覚では黒イと守りたくなりますが、こういう頑張りが成長を助けてくれるのです。
 上辺の黒が薄いのですが、白は手をつけないで白4と黒模様を値切ってきました。なかなかの試合巧者です。黒が突進しようとするのを、うまくかわしています。

 【1図】 上辺の黒を攻めるぴったりした手がありません。白1の出から3と切る手は見えますが、白5と1子抱えても、黒8まで止められるとさっぱりです。ですから、テーマ図の白4が冷静な好手だったのです。

 【2図】 黒1のツケから分断を狙っていきます。白2のハネでは6と引く方が冷静でした。黒3とハネ返して強引に切って行きました。黒9のツギから11と出て、△を切り離しました。黒23の伸びまで、黒は目的を達しました。右下の黒は眼があります。ただ、これで形勢はいい勝負でしょう。互いにはつらつとして生きのいい碁です。

●メモ● 三村九段の教室は千葉県市川市の「市川こども囲碁道場」。子どもを教えるのはなかなか難しく、自分が教えない方がいいんじゃないかと悩むこともあったという。しかし、それじゃあ教室をやっている意味がないと思い直したそうだ。真面目な性格で、子どもたちと正面から向き合っている。

【テーマ図】
【1図】
【2図】