上達の指南

宮崎龍太郎六段の「三々対策入門」

(4)ほどほどで満足も大切

(寄稿連載 2005/06/13読売新聞掲載)

 相手の地は大きく見えるものです。根こそぎ荒らしてしまおうと無理な突入をしてはいませんか。うまくいけば大勝利です。ただそれは正しい手だったわけでなく、相手が受け間違っただけです。おいしすぎる話は本来ありません。三々でもそうです。一方的に良くなったり、悪くなったりすることはありません。お互いがほどほどに満足して分かれるものです。正しい感覚を磨きましょう。

 【テーマ図】 これまで以上に実践的な局面です。大場を打ち合い、そろそろ三々が大きくなりました。皆さんはもう、正解がおわかりですね。

 【正解図】 黒1といったんはさえぎり、黒7まで。黒は模様を広げ、白は隅の地を取り、双方満足です。黒5の当ては絶対です。手抜きをされる方を時々見かけますが、すぐにはねてこられます。白から黒5の1子をかみ取る手は11目強。この段階ではまだ小さい。
 初めに、三々対策の大原則として、大事にしたい方から押さえる、とお話ししました。黒1はその原則からはずれています。これは大事な方を守る逆モーションとお考えください。一間に締まっている時は白から黒3の地点にそわれても、ぴたりと止まるのです。白は隅で窮屈な生きを余儀なくされます。

 【失敗図1】 大事にしたい方を押さえての失敗です。正解図と比べれば白地がずいぶん増えています。

 【失敗図2】 黒1の押さえから、3とさえぎりました。白8まで右辺の黒地はがらがらです。上辺の白地も傷みますが、黒の被害の方が大きい。

 三々入りは第一級の寄せ。どの時点で打ち込むのか、あるいは守るのか、勝敗の行方をも左右します。もし先に打ち込まれたら、どちらの方向が大切なのか素直に考えてください。自然に正しい方向が見つかるようになれば棋力がアップしている証拠です。(おわり)

【テーマ図】
【正解図】
【失敗図1】
【失敗図2】