上達の指南
(1)迫力ある攻めとシノギ
(寄稿連載 2016/09/20読売新聞掲載) 最近の世界戦の中から私の印象に残った対局を紹介していきます。LG杯は韓国の国際戦で、2人とも韓国の棋士。姜さんが本気で相手の石を取りに行った一局です。世界戦決勝の舞台でですから、度胸があるなぁと感銘を受けました。迫力ある攻めと見事なシノギをご覧ください。
【1図】黒23が参考にしたい肩ツキです。この手で黒Aは、白B、黒C、白Dで普通のようですが、右上がスソアキなので模様の規模が小さい。もっと広げたいのです。白26の消しに黒Eも不満。黒27、29とさらに広げました。白34のとき、次の手がポイント。すぐに襲いかかりたくなりますが、黒35と下辺に向かったのです。中央とのカラミ攻めを狙う大作戦です。
【2図】黒43は簡単には治まらせないぞという鋭いツケ。
「参考図1」のようになれば、白の眼形がありません。でも白44、46が鮮やかな返し技。黒の狙いを防ぎつつ、白48まで黒43の石を取り込みました。
黒51に手を抜き、白52と稼いだのはシノギに自信がある朴九段ならでは。白58が好手でした。白60に「参考図2」の黒1と切りたいのですが、白4までAとBが見合い。黒61から小さく囲うしかなく、白66までと渡っては白一本です。
黒67から中央の攻防は超難解。厳しい攻めに白の疑問手が出て、結果は黒の中押し勝ちとなりました。姜さんの気迫が印象的な一局でした。
●メモ● 望月七段は東京都出身。菊池康郎氏が主宰する緑星囲碁学園で学び、2000年入段。同期に首藤瞬七段、林漢傑七段、万波佳奈四段、関西棋院の瀬戸大樹八段。皆、仲が良く、「漢傑君と瀬戸君は学年も一緒。2人が結婚した時はご祝儀をたくさん包みました。お返しはまだです」。