上達の指南
(2)アルファ碁衝撃の連続
(寄稿連載 2016/09/27読売新聞掲載) 李世ドル九段と人工知能「アルファ碁」との五番勝負には、世界中の棋士が注目しました。今回は第2局を紹介します。特に衝撃を受けた一局です。
【1図】白12に手を抜き、黒13と上辺を構えたのが最初の衝撃。黒5、7の2子だけなら軽い石と考えられますが、黒11が加わればもう捨てられない。黒Aと安定させるのが普通です。
白Bには黒14、白Cには黒Dと大場に先行する作戦で「それでも黒3子は簡単には攻められませんよ」と言っているのだと思います。李九段も納得したのか、白14と左辺に向かいました。
【2図】黒15にもびっくり。今後の展開によっては悪手になる可能性があるので、すぐに打たないのが常識でした。黒37という5線の肩ツキも驚きで、研究の結果、黒15との連携プレーだと分かり、さらに衝撃でした。ただ、黒43からはつまらない逃げ。白70でAかBなら白がよかったと思います。
【3図】黒81が皆さんにお伝えしたい一手です。白80の打ち込みに、「攻めません」と答えたのです。素晴らしい好手です。
ゲタを預けられた白は、82から逃げるしかありません。白98で99とつぐのは、黒Aで死にそうです。黒99まで、黒は全く損をしていません。
まだ白がよいという声もありましたが、この後、黒は無難に打ち進めて2連勝。早い時期からしっかり計算ができていたことも衝撃でした。
●メモ● 望月七段は11歳から緑星囲碁学園に通い、「五段になって一人前」という考え方のもと、17歳でプロ入りを果たした後も週6日、朝9時から夜9時まで「緑星」で囲碁の勉強に没頭した。2007年、新人王戦準優勝。2010年、王座戦挑戦者決定戦に進出。
白 九段 李世ドル
黒 アルファ碁
(2016年3月)