上達の指南
(4)劣勢から反撃する技と力
(寄稿連載 2016/10/11読売新聞掲載) 最後は日本代表でLG杯に出場した蘇九段の戦いを紹介します。日本は世界戦でなかなか勝てない印象ですが、内容的にはいい勝負なのです。日本もあと一歩だということをお伝えしようと思います。
【1図】黒模様を△で消され、白リードの局面です。ここから蘇九段が盛り返していきます。黒83からご覧いただきます。
黒83は劣勢を意識した目いっぱいの手です。黒93の切りから99まで攻勢をかけます。白100はさすがの手筋。黒103と受けると白A、黒101、白Bまで中央の要石を切り離されます。白102と連打して、ここは白がポイントをあげました。しかし白110が失着。「参考図1」の白1でした。黒2には4子を捨てて白11に回り、これは白の得が大きい。それに左辺は厳しい次の手がなく、白Cには黒Dでシノギ形。黒111に回っては黒有望です。黒123まで白は上辺も中央も薄い。
【2図】ここから柯九段が力を出します。白124の切りが後の利きをみた様子見。白126は先手で連絡を図る妙着。白132も巧みな様子見でした。黒139でAなら優勢をキープできましたが、白Bを利かされないよう頑張りました。しかし「参考図2」の白Aの利きを残したのがマイナス。白140は芸のある誘い。黒144なら堅いが、実戦心理としては黒141に行きます。白148とコウになって形勢不明。結果は無念の中押し負けでした。(おわり)
●メモ● 望月七段は、LG杯を始め中国・韓国主催の世界戦の予選に「25歳までは毎年」参戦していた。旅費と宿泊費は自弁だった。本戦に進出するのは難しかったが、予選を何局か勝ち進めば、その対局料でまかなえたという。今は国内でネット観戦に回ることが多いという。
第21回LG杯朝鮮日報棋王戦1回戦
(2016年5月)
白 九段 柯潔
黒 九段 蘇耀国