上達の指南

本木克弥七段の「無理のない攻め方」

(1)深入りをされたら攻勢に

(寄稿連載 2016/03/29読売新聞掲載)

 相手の石を攻めるのは気持ちがよいですが、攻め過ぎて損を重ねた揚げ句に取り逃がしては、元も子もありません。攻めながら得を図りつつ、潮時を見て引き揚げるのが肝要です。攻め方は一直線ではなく、さまざまなパターンを想定し、無理のない柔軟な策を取りたいものです。

 【テーマ図】 安達三段とは研究会が一緒で、よく打ちます。早見えで、鋭い感覚の持ち主です。
 白1の消しが浅いか深いかを判断し、対策を立てます。私は「深い」と判断し、攻勢に出ました。

 【1図】 黒1のケイマが攻めの要点です。少し怖いかもしれませんが、攻めはこれくらい大きく行きたい。白は2のボウシから4、6と変化しましたが、白10の当てに黒11が強手です。
 黒には13と格好のコウ立てがあり、黒17と味よくポン抜いて攻めが奏功しました。手順中、白2でAは「車の後押し」で、黒Bと伸びて不満ありません。

 【2図】 黒1のボウシは気合のよい攻めに見えますが、白2、4とツケ伸びられます。黒5に白6となっては攻め切れず、失敗です。

 【3図】 △の消しを深くないと判断し、黒1と受けるのは白2、4のツケ伸びがぴったりです。黒5に白6と飛ばれて、白の思うつぼです。

 また、黒1でAにつけて下辺を守るのも、白Bの伸び以下白Fと飛ばれ、白の消しは大成功となります。

●メモ● 本木七段は、藤沢一就八段が主宰する東京・新宿の「天豊道場」に寄宿している。寺山怜四段が独立し、いまは塾頭格。広瀬優一新初段、院生2人の4人で生活を共にしている。高尾紳路九段らも指導に寄ってくれる。「碁の勉強には大変よい環境で、もうしばらくお世話になります」

第24期 竜星戦本戦
白 三段 安達利昌
黒 三段 本木克弥

【テーマ図】
【1図】12(6)、15(6の上)
【2図】
【3図】