上達の指南

本木克弥七段の「無理のない攻め方」

(4)欠陥を埋める高等戦術

(寄稿連載 2016/04/19読売新聞掲載)

 攻めの究極の目的は、隙あらば相手の石を取ってしまうというものです。しかしソフトタッチで、自分の欠陥をカバーするという高等戦術もあります。

 【テーマ図】 大矢九段は研究熱心で知られますが、特に世界の流行布石を熟知しています。

 白には黒イとハネ出される欠陥があり、先に白ロと守るのでは足が遅い。右上の▲を攻めつつ、右下の欠陥をカバーしたい。どこから行きますか。

 【1図】 白1のボウシが絶好です。3から5の攻めに、黒は6とつけました。その調子で白7から9と幸便に飛んで目的を達成しました。
 つまり白9に石がくると、黒Aのハネ出しには白Bのカケでさばくことができるのです。

 【2図】 白1、3のハネツギは、隅の地を確保しつつ重厚な攻めですが、すかさず黒4とはね出されます。白5とかけても、黒6の出から10につがれると、白は傷だらけ。白11とついでも黒12に切られ、壊滅状態になります。

 その際、白Aに一着があると黒12には白Bと引く手が成立し、黒Cには白Dと応じてしのげるのです。

 【3図】 白1のカタツキも攻めの一手法ですが、黒2の下がりから6に飛ばれ、攻めの効果はいまひとつです。

 依然として黒Aのハネ出しが脅威。また、黒2に石がきたため、黒BまたはCの侵入があり、白には二重の不安が残ります。

(おわり)

●メモ● 本木七段は、3年間務めたNHK杯トーナメントの秒読み係を卒業した。初めての収録の時は、自分も参加している、と感動したという。「局後の検討を聴くのが大変勉強になりました」。今春開幕の第64回大会には対局者として出場する。「精いっぱいがんばります」

第40期 棋聖戦予選
白 三段 本木克弥
黒 三段 大矢浩一

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】