上達の指南
もたれて遠巻きににらむ
(寄稿連載 2016/04/05読売新聞掲載) モタレ攻めは、本命の石に直接手を出さず、他の石に寄りかかるようにして攻めを見る手法です。
直接手を出しては空回りする恐れがあるときなど、一種の保険を掛ける意味もあります。
【テーマ図】 余七段には早碁棋戦の決勝で負かされています。同い年でもあり、意識する相手です。今期の本因坊リーグ。黒1と右辺を備えたのに、白2とケイマに出てこられた場面です。この時点で、控室では黒乗りとの評判だったようですが、私はまだまだ難しいと思っていました。黒はどこから攻めるものでしょう。
【1図】 黒1、3と左辺の白にもたれていき、遠巻きに右方の大石をにらみました。これに対し白4と踏み込んできたので、黒5とこすみ、白8に黒9以下強硬策に出ました。黒19と切って分断し、これは黒1、3の2子が利いてきました。
白4でA以下Eと受けて地を稼ぐのはむさぼりです。黒は左辺が強固になったことを生かし、黒8と本格的な攻勢に転ずることになります。
【2図】 直接、黒1と襲いかかるのは、白2のコスミ以下白8となり、攻めは息切れです。しかも白が8まで手厚くなると、上方の黒一団の根拠が心配になりかねません。
黒1でAと攻めるのは、白Bにつけられ、黒C、白D、黒Eで隅に生きを残されて、白1と逃げられます。攻めは空振りです。
●メモ● 本木七段は、10歳のときから藤沢一就八段が主宰する「新宿こども囲碁教室」で学んだ。月1、2回、群馬県の自宅から片道2時間半かけて通った。ここから巣立ったプロ棋士は、今年入段した広瀬優一、上野愛咲美両初段を加え7人。院生19人も学ぶ。
第71期本因坊リーグ
白 七段 余 正麒
黒 七段 本木克弥