上達の指南
(3)「石を捨てる」ことも大切
(寄稿連載 2008/06/16読売新聞掲載) 碁を覚えて間もないころは、石を取るのが楽しくて仕方ありません。反対に自分の石はすべて助けたくなります。でも、上達するためには、要らない石を捨てることも大切。今週は、「捨て石作戦」を覚えましょう。
実は私も、つい最近、「白番で全部しのいで、細かい碁で勝つのが好きです」と話し、依田紀基九段が驚いた顔をされたことがありました。「捨て石」の名人、依田九段に「囲碁は効率よく打つ方が勝つゲームなんだよ」と諭され、ハッとさせられました。
【1図】 やや極端ですが、効率よい打ち方の例です。黒は1の1子を捨てて、どんどん大場に展開し、優勢を築いているのがおわかりでしょう。
【2図】 この局面で、捨て石作戦を考えましょう。黒1、白2と打ったところです。黒1のように「2子にして捨てる」のがコツです。
続いて黒イ、白ロ、黒ハと打てば、右上の黒は生きられます。でも、黒にはもっと効率のよい打ち方があるのです。
【3図】 黒1、3が、▲の2子を上手に捨てる打ち方。白4まで▲を取らせたとき、黒5と打つと、なんと△の4子を取ることができます。2図の黒イからハでは、残念ながら黒の負け。でも3図なら黒堂々の勝利です。捨て石の味をしめると、囲碁がますます面白くなります。
●メモ● 向井初段は今年、女流名人戦で勝者組の決勝に勝ち上がり、惜しくも小林泉美六段に敗退。敗者組に回り、準決勝で千瑛二段との姉妹対決が実現した。「姉の貫録で、なんとか勝てました」。その後、決勝で謝依旻女流本因坊に惜敗。「来年は、もっと上に行けるようがんばりたいです」