上達の指南

向井芳織初段の「入門その後のポイント パート2」

(3)寄せでは取るより得狙う

(寄稿連載 2009/01/26読売新聞掲載)

 今回は「寄せ」の場面をテーマにしましょう。寄せは黒地と白地の境界線を決めていく単純作業のように思えますが、実は、知らないうちに寄せで逆転されているケースが多いのです。

 【1図】もうすぐ終局という場面。黒の次の手を考えてください。

 【2図】入門したばかりの皆さんは石を取ることが大好きですから、ほとんどの方が黒1と打つのではないでしょうか。確かに白2子を取ることができます。ところが白2と打たれると、黒地ができそうだった場所が消えてしまいます。黒1より得な手があります。

 【3図】正解は黒1です。白2と打たれて2子を助けられてしまいますが、2図より黒地が増えています。
 では、2図と3図を具体的に比較してみましょう。どちらも白地は増えていません。黒地はどうでしょう。2図は白2子を取り、黒地が2目増えているので、揚げ石を加えて4目増えました。3図は2図に比べて6目増えています。つまり3図の方が黒は2目得をしているわけです。

 このように、相手の石を取るより、自分の地をしっかり守る方が得になるケースがあることを、ぜひ覚えてください。
 ちなみに、2図は白の1目勝ち、3図は黒の1目勝ちという結果。2図は、寄せで逆転されてしまうパターンでした。

●メモ● 「昨年、ネットとCSテレビが連携した入門講座を妹たち(次女・梢恵初段、三女・千瑛二段)と担当しました。とても勉強になりました」。日本棋院のホームページには、その講座「ネットで囲碁入門。向井三姉妹のみんなであっぷUP←」のブログが掲載されている。

【1図】
【2図】
【3図】