上達の指南

村上晶英三段の易しいカタツキ戦法

(2)逃げ足速くローリスク

(寄稿連載 2017/08/01読売新聞掲載)

 「カタツキ」の利点は、軽やかで重くないこと。したがって模様を消す際には逃げ足が速く、全滅を食うなどのリスクが少ないことです。

 【テーマ図】
 黒1、3、5の構えは、小林光一名誉棋聖が多用し、一世を風靡した「新小林流」布石です。
 白8のカカリに黒9と挟み、白10以下は基本定石。黒は19といっぱいに開き、右辺一帯に大模様を目指しました。
 白はどこから手を付けるか。ここで「カタツキ」からの消しが有効です。

 【1図】白1のカタツキが絶好で、正解です。黒2のハイには白3と伸び、黒4の曲がりに白5と飛ぶ調子です。
 続いて、黒は6の伸びが欠かせず、白7と軽快にケイマして黒模様を消す要領です。

 【2図】黒2と押してくるなら白3と伸び、黒4のケイマに白5の曲がりから7、9とハネかけつぎ、白は手厚い形です。
 手順中、黒4のケイマでAと曲げてくるなら、白Bと飛びます。続いて、黒Cの伸びに白Dとケイマして、下方の黒模様が自然と消えます。

 【3図】「カタツキの消し」を知らないと、白1などと打ち込むことになりますが、黒2のハサミから4と追撃されます。
 白5の飛びに黒Aと攻撃されると、白危険です。

 【4図】白1から3の押さえ込みは一つの狙いですが、黒は4から8の伸びが正着です。白9以下黒12で、これも白大苦戦です。

●メモ● 村上三段は小説が好きで、よく読んでいる。その影響もあって、最近、漢字に興味を持つようになった。小中学生の頃は算数や数学が好きで、国語はどちらかというと不得手だった。この機会に「漢字検定」に挑戦することにして、1年以内の3級取得を目標にしている。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】