上達の指南

仲邑信也八段の「攻めの急所」

(1)「三目の真ん中」で決める

(寄稿連載 2011/05/31読売新聞掲載)

 攻めは囲碁の醍醐(だいご)味です。攻めが勝ちにつながれば、こんなに気分のいいことはありません。しかし攻めすぎて形勢を損じてしまうことはありませんか。しっかりと急所を押さえることが大切です。
 埼玉県朝霞市で主宰する「朝霞囲碁塾」の塾生の実戦を題材に説明したいと思います。先番は4段の小学6年生、白番は6段の中学2年生です。

 【テーマ図】 白16と両ガカリし、18と切りに行ったのがどうだったか。黒の勢力圏で戦いを挑んでしまいました。白が無理気味の展開と言えます。黒29のツギがいい手です。こうして力をためるのが、次の攻めに生きてくるのです。

 【正解図1】 黒1が「三目の真ん中」の急所ですね。白2から逃げだそうとしますが、黒5とかけて止まっているのです。見事に仕留めました。テーマ図の手厚いツギの効果です。自分の姿がしっかりしていないと、どこかが破れてしまうものです。

 【正解図2】 白2は粘りの手です。黒は喜んで二線をはわせます。白はなんとか生きますが、これなら捨てた方がいいくらい。黒15と自陣に手を戻した後、AとBが見合いです。どちらも素晴らしい好点で、これも黒の大成功と言えるでしょう。

 【実戦図】 黒1は踏み込み不足でした。白2と飛ばれると、もう捕まらない。黒は中央が厚く、これからの碁ですが、急所を外して大優勢のチャンスを逃してしまいました。

●メモ● 「朝霞囲碁塾」((電)048・203・5423)は自宅を教室に、昨年10月に開設した。特訓、基本、平日の3クラスあり、4歳から高校生まで約20人が通う。特訓クラスは土日の午前9時から午後3時まで、棋譜並べ、詰め碁、実戦とみっちりした内容。「いずれプロを送り出したい」

【テーマ図】
【正解図1】
【正解図2】
【実戦図】