上達の指南

仲邑信也八段の「攻めの急所」

(3)伸び切りで眼形を確保

(寄稿連載 2011/06/14読売新聞掲載)

 「眼形の急所」という言葉は、皆さんもご承知でしょう。部分的には小さくても、しっかり生きを図ることで、心おきなく攻めに回れます。お互いの急所が同じなら、逃してはならない要点になります。今回も「朝霞囲碁塾」の塾生の実戦から。先番は4級の中学3年生、白番は初段の中学1年生です。

 【テーマ図】 右下に注目してください。どこが急所か、もうお分かりですね。

 【正解図】 黒1の伸び切りが絶対。2線を打つ手で気がつきにくいかもしれませんが、これで黒ははっきりと生きています。白は追い出され、2、4と中央へ向かうしかない。黒5と攻めを続行して快調です。好みによっては5でAと堅実に行く人もいるでしょう。
 逆に白1と打たれると、白は生き、黒は眼の心配をしなければなりません。攻守逆転です。この急所に目がいくようになれば立派な初段です。

 【参考図】 黒1に手を抜いて白2と右上にかかるのは無謀というもの。自分の置かれた立場をわきまえていません。黒3でほぼ止まっており、白A以下黒Dまでコウとなります。黒1と打たれると、部分的に白には眼がないことをしっかり認識することが大切です。

 【実戦図】 黒1と逆のほうで眼を作りに行ってしまいました。白6までの交換は白の大もうけ。黒7でも8へ伸び切るべきでした。着実に生きた白は10ではAとかかるのがよかったでしょう。

●メモ● 仲邑八段の妻、幸(みゆき)さんは大学囲碁部で活躍し、囲碁インストラクターに。関西を拠点としていた2007年に結婚した。2歳になる長女は碁石で遊ぶようになり、仲邑八段は「楽しみにしています」。関西棋院所属の石井茜初段は、幸さんの妹。

【テーマ図】
【正解図】
【参考図】

【実戦図】