上達の指南
(1)ハサミから主導権を握る
(寄稿連載 2012/01/10読売新聞掲載) 置碁では、シタ手はどうしても「序盤は無難に――」という気持ちが強く、手堅くなりがちです。そして徐々に差を詰められ、気がつくと碁にされているケースが多いのです。
立ち上がりから積極的に仕掛け、いち早く主導権を握る。これがこの講座のテーマです。一度、試してみて下さい。
【テーマ図】 白1、3のカカリに、黒4のハサミが積極的な戦法です。普通はおとなしく黒イと受け、白ロと富士山に構えられ、黒ハ以下白ヘと穏やかな進行から道中が長くなり、碁にされて行くのです。
【1図】 白2の三々なら、黒3以下白10に黒11と先制攻撃し、黒の理想的な進行になります。
【2図】 白1の飛びから3などと挟まれるのが、シタ手としては心配のはずです。しかし黒4と飛んで、白5に黒6から8がよい調子で、心配など全くありません。
【3図】 黒のもう一つの心配の種は、白1の両ガカリでしょう。これも黒2、4とツケ伸び、白7には黒8のツケから10とはねる手順を覚えておけば大丈夫です。黒16の押さえから18が手ごわく、黒が完全に主導権を握りました。
黒16でAは白Bと連絡され、ちょっと甘いです。
【4図】 途中、白1のハネから3と下辺に手を回してくれば、黒4の切りから6と伸びた姿が手厚く、これもまた黒の理想的な運びでしょう。
●メモ● 中根八段の夫人は金賢貞三段。5歳と2歳の男の子がいる。家では、碁の話はするが、対局することはほとんどない。公式戦では約3年前に当たり、中根八段が黒番中押し勝ち。「私の方が形勢の悪い碁でしたが、最後にラッキーで……」。当日は一緒に家を出たが、帰宅は別々だった。