上達の指南

中野泰宏九段の「布石の分岐点」

(1)場合の手の柔軟さに感心

(寄稿連載 2007/02/19読売新聞掲載)

 ◆2002年3月研修対局 (白)王 尭五段 (黒)中野泰宏七段

 最初に中国に行ったのは1999年、四段の時でした。1人で北京・中国棋院近くのホテルに3週間ほど滞在し、2日にあげず研修対局を行いました。成績は2勝8敗ぐらいだったと記憶しています。2回目は2002年、瀬戸大樹四段と2人で1週間滞在し、4局打ちましたが、全敗でした。
 今回から4回にわたり、その時の研修対局を題材にしてお話しさせていただきます。中国で学んだ僕の反省会のようなものです。段位はいずれも当時です。

 【テーマ図】 黒21はAからの切断を強調しているのですが、白B、黒Cと切る手が愚形なので、そんなに力むところではありません。それにしても、黒27はD、白E、黒Fとハネノビるべきで、石も張っていますし、切った時の迫力が全然違います。白28に、僕は方向を誤りました。

 【変化図】 難しいことは考えず、黒1と平凡に受けるのが良かったようです。白2から4と治まった時、黒5のハサミが素晴らしい好点になります。これなら十分打てる形勢でしょう。

 【実戦図】 黒5のコスミツケに対し、白6のハネから8のアテを決められました。場合の手ですが、右辺の黒は強いから、いくら固めても惜しくない。王さんの柔軟な発想に感心させられました。

 白10以下、黒17までは自然な進行です。白18のコスミツケから20の絶好点に開かれてみると、やや白が走った布石のような感じがします。黒Aの狙いもあまり期待できそうにありません。152手までで中押し負けでした。

●メモ● 中野九段は関西棋院所属。森野節男九段門下。福岡県出身、29歳。1992年入段、2005年九段。関西棋院賞の新人賞、利仙(敢闘)賞、道玄(殊勲)賞(2回)を受賞。昨年の成績は17勝13敗。

【テーマ図】
【変化図】
【実戦図】
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