上達の指南

中野泰宏九段の「布石の分岐点」

(2)伸びずに切り一転悪手に

(寄稿連載 2007/02/26読売新聞掲載)

 ◆2002年3月研修対局 (白)中野泰宏七段 (黒)古力五段

 この対局当時、東京の呉先生(清源九段)宅で月に1回開かれていた研究会に3年ぐらい通わせていただきました。そうそうたる顔ぶれの棋士が真剣に研究する姿勢に刺激を受け、非常に勉強になりました。呉先生が推奨される手を時々、使わせてもらっていますが、目ぼしい効果は上げられません。やはりまだ僕の力が足りないんですね。

 【テーマ図】 右下、黒11のトビに対し、白12のツケから、黒13に白14とはねる厳しい手段も呉先生のおすすめです。黒15以下、白22までの進行は、今は定石化しているかもしれません。
 黒23のシマリに、白24と切り、黒25と抜きました。僕はここでも方向を誤ったのです。

 【変化図】 白1と伸びる一手だったようです。黒2の挟みなら、白3のカドに黒4の受けが絶対で、この利かし一本がたまりません。白5とケイマして、ゆっくりした形勢でしょう。黒4があまりにもつらいので、黒2ではAのケイマと辛抱するものかもしれませんが、白は黒を低位に追いやったことに満足できます。呉先生の教えが身についていませんね。

 【実戦図】 白1のコスミツケも小さくはありませんが、下辺の方が大どころでした。黒2のアテから4と平凡に抱えられ、一挙に強力な厚みと模様が出現しました。△の切りが悪手になっており、黒が働いています。白が面白くない布石でしょう。

 白5のカカリから、7、9とつけ切ってさばきを図りますが、黒16と追及されて苦しそうです。
 このあと、あっちもこっちも攻め立てられ、ボロボロにされました。155手までで中押し負けでした。

●メモ● 中野九段は一昨年、第49期関西棋院第一位決定戦で決勝三番勝負に進出したが、横田茂昭九段に白番中押し負け、先番1目半負けと連敗し、初タイトルを逃した。NHK杯には5回出場している。

【テーマ図】
【変化図】
【実戦図】