上達の指南

中野泰宏九段の「布石の分岐点」

(4)安易なノゾキが失着に

(寄稿連載 2007/03/12読売新聞掲載)

 ◆2002年3月研修対局 (白)中野泰宏七段 (黒)胡耀宇六段

 この訪中時に対局した棋士は、その後も目ざましい活躍をしています。古力九段は昨年、名人戦、NEC杯戦、LG杯戦、天元戦などで優勝して第一人者といわれ、リーダーの一人として中国囲碁界を引っ張る存在になっています。胡耀宇八段と孔傑七段は、世界選手権・富士通杯や春蘭杯などに出場し、さらに上をうかがっています。

 【テーマ図】 黒1、5、7の中国流はいつごろから打たれるようになったのでしょうか。黒17まで、現在でもよく見かける布石です。黒19と大ゲイマジマリにシンを入れた局面で、白はどう打つべきでしょう。

 【変化図】 白1のトビが面白かったと思います。黒2の打ち込みなら、白3のケイマから7まで左下隅を固めて、これはゆっくりしています。白1ではAの囲いも考えましたが、ピンときませんでした。

 【実戦図】 僕が利かしと考えて軽い気持ちで打った白1のノゾキが失着でした。黒8とついでくれるはずがないですよね。黒2と反発されて困りました。勢い白3と押さえましたが、黒4と打ち込まれ、白5と逃げるのでは重く、気に入りません。白7と1の顔を立てにいきましたが、19と二線に打たされて、面白くない形勢になっています。

 胡さんは力が強く、僕が予想していない手を多く打たれました。169手で中押し負けでした。棋譜を並べ直してみると、負けるべくして負けた4連敗と納得させられます。彼らはみな20代前半の打ち盛りですが、こわがったり感心したりばかりもしていられません。いくらのんびり屋の僕も、間もなく30代、もうやるだけです。
(おわり)

●メモ● 中野九段は昨年4月から月1回、A4判、1ページの「中野新聞」を発行している。最近の対局の結果を掲載し、夢や目標などを熱く語る。問い合わせは両丹企画(電0773―43―0453)へ。

【テーマ図】
【変化図】
【実戦図】