上達の指南
(3)地にからく、厚い白に敬服
(寄稿連載 2007/03/05読売新聞掲載)◆2002年3月研修対局 (白)孔傑六段 (黒)中野泰宏七段
僕より一つ年上で親しい王ユウ輝七段は、中国国内のランキングは20位ぐらいで、2000年には第5回三星火災杯の本戦に進出しています。その王さんから「力が足りない。もっと厳しく打った方がいいのでは……」とよくアドバイスされます。生来ののんびり屋のぼくの着手がぬるく見えて歯がゆいんでしょうね。僕もその弱点は自覚していて、今後はその克服が課題だと気を引き締めているところです。
【テーマ図】 どう打つのが最善かは別にして、黒11、13は何となく手が伸びていません。研修対局で2連敗して硬くなっていたのでしょう。黒17も呉先生(清源九段)推奨の手ですが、とてもモノになっているとは言えません。後の打ち方がまだよく分からないのです。
白30とこんなに早く二線に打たれ、最初は驚きましたが、しだいに敬服に変わりました。これは白を安泰にしながら下辺黒地の削減をにらんだ、しぶい好手だったようです。ここで僕はのんびり屋の弱点をさらけ出してしまったのでした。
【変化図】 平凡でも黒1のコスミが正着だったと思います。白2に黒3と打ち込みます。白4、黒5とトビトビの進行なら不満は言えません。右上方の白2子にも無言の圧力をかけられます。
【実戦図】 黒1は5までと後手を引き、白6と先着されて大甘でした。△の切っ先が二つも出ているから、中央経営は望めない局面でした。
黒11のツケに対する白12のノビにも感心させられました。白は地にからく、しかも厚いのです。この後、的確に打たれ、192手までで中押し負けでした。
●メモ● 中野九段は1995年から週に1回、4年間、関西棋院近くの中国語教室に通った。関西棋院と台湾との交流試合では、向こうの幹事と国際電話で打ち合わせをするというから、かなりのものだ。