上達の指南

中野寛也九段の「打つ前にひと呼吸」

(4)狙いの石を見定める

(寄稿連載 2014/09/16読売新聞掲載)

 碁は序盤から、選択を迫られる場面が何度も訪れます。そのたびに、先の見通しを立てることが主導権を握るコツですし、全局を見て次の手を考える習慣をつけることが上達につながります。手筋を身につけるだけではなく、それで何がしたいのかを考えることが大切です。

 【テーマ図】 ▲と割り込まれた場面です。白の選択肢としては、イと上から押さえるか、ロと下から切るかの二つでしょう。どっちもありうる手ですが、その後どうなるのか考えてください。少し先まで変化を見通して判断しましょう。

 【1図】 白1と下から切るのは、黒2に伸びられます。白3と抱えれば、黒4から8でシチョウです。白3で4とつげば、黒イと抱えます。いずれにしろ、白の難しい戦いになるでしょう。

 【2図】 白1と上から当てるのが正しい選択です。黒2のツギに、白3と押さえるのが肝心です。黒4、6のアテツギで白1子は犠牲になりますが、白7のツギまでこっちを厚くして、左下の黒2子を厳しく攻めます。標的はこの2子だったのです。
 白3で4と伸びるのは部分的には定型ですが、黒3と曲げられると、左方の黒2子と連絡されて甘くなります。白石の多いところですから、もっと厳しい発想が必要でした。
 打つ前に少しだけ先を考える習慣をつけましょう。そのひと呼吸が上達につながります。
(おわり)

●メモ● 中野九段は、アマチュアを指導碁で教える機会も多い。アマはどうしても視野が狭くなる傾向があって、部分的な一手一手にあくせくしてしまうことが多いという。全体を見て、先を見通した打ち方をすればすぐ強くなる。「この講座で、そのことが伝われば」と願っている。

【テーマ図】
【1図】
【2図】