上達の指南

中野寛也九段の「忙しい布石の打ち方」

(1)開いて選択肢を増やす

(寄稿連載 2018/06/27読売新聞掲載)

 布石の進化が激しくて、かつての常識が変わりつつあります。空き隅を最優先に、次に締まりからかかりに回るという順番も崩れてきました。小目に締まらないでどんどんかかっていく。定石をひとつひとつ作っていくのではなく、途中で放っておいて盤面全体を駆け巡る。そんな忙しい布石が大流行しています。

 そんな最新の布石を、いろいろな局面を参考に勉強していきましょう。プロの最新の対局を理解するためにも、自分の碁に取り入れて楽しむためにも、最先端の打ち方に触れていただきたいと思います。

 【テーマ図】四隅でかかり合っています。どこから手を付けていいのか迷う局面です。まず黒1と挟んで、ここから仕掛けていきました。白2の飛びから4と挟み返した場面です。黒はこのまま定石を続けていいでしょうか。もっと大事なポイントがあるのでしょうか。

 【1図】黒1と飛ぶのは部分的には定石ですが、この場合は白2のカケがぴったりになります。白6まで厚くされると、黒の次の手が難しい。右下の白2子は軽い形をしていますから、厳しく迫る手もなさそうです。

 【2図】白にかけられる前に黒1と開くのがお勧めです。白2とボウシしてきたら、そのとき▲の1子をどう考えるかです。軽く見て、黒AやBに先着するのもいいでしょう。あるいは直接、黒Cと動き出すことも可能です。選択肢が増えて、楽しい局面になっています。

●メモ● 中野寛也九段は、広島県出身。1969年6月3日生まれ。85年に入段、95年にNEC俊英トーナメント優勝。2000年には十段戦挑戦者となり、10年には竜星戦準優勝を果たした。15年に通算800勝達成。日本棋院中部総本部所属。各棋戦で活躍する中部を代表する棋士の一人である。

【テーマ図】
【1図】
【2図】