上達の指南
(4)相手の変化に慌てない
(寄稿連載 2018/07/18読売新聞掲載)序盤早々でも自分の構想を打ち立てるチャンスがあります。多少強引でも、思い通りの展開になれば楽しいもの。ただし相手も言うことを聞いてくれるとは限りません。思わぬ変化に戸惑うこともあるでしょう。慌てず騒がず自然な流れに乗って行きたいものです。
【テーマ図】今回も締まりのない布石です。黒1のカケは有力な作戦です。黒1とかけた以上は、厚みを作って左辺を広げるのが自然な発想ですが、相手もどこかで変化して来るかもしれません。
【1図】左上の定石を継続して、黒1の押しからどんどん厚みを作るのが有力です。黒9の切りが肝心な手順です。黒11のツケを利かして黒15のノビまで壮大な厚みを築きます。白16のノビには、黒17と左辺に開いて構想通りの模様ができました。こうなればいいのですが、白が変化して来る場合も考えておかなければなりません。
【2図】前図の黒11に手を抜いて、白1と当ててくる可能性もあります。黒2と白2子を取れば実利が大きくて満足ですが、白3とポン抜いて白も厚みで対抗してくるでしょう。
【3図】1図の白16では、白1と左辺に打ち込んで来るかもしれません。黒2とシチョウに抱えて十分ですが、白3のコスミツケから左辺の主役は入れ替わります。
かかりを優先する布石は変化に富んでいます。華やかな碁を楽しんでください。(おわり)
●メモ● 中野九段は数年前から、ジムに通って体力作りを心掛けている。時間があれば週に4日ほど体を鍛えることもあり、体調もよいという。棋士は座業で運動不足になりがちだから、メリハリをつけるのにうってつけだ。体調維持に努めながら、勝負師の神経を研ぎ澄ましている。