上達の指南

第3回ネット棋聖戦 決勝大会特選譜

(3)石運び安定 趙さん決勝へ

(寄稿連載 /2017/01/24読売新聞掲載)

 ◇準々決勝 白 井場悠史 黒 趙錫彬

 3連覇を目指す趙錫彬さんに、こちらもネット棋聖戦の上位常連となった感のある井場悠史さんが挑んだ準決勝。白番の井場さんが巧みな打ち回しで、序盤は優位に打ち進めていたのだが……。

 【テーマ図】碁盤左半分の折衝でやや後れをとった趙さんが右辺で競り合いに持ち込み、巻き返しを図っている状況。黒1とつけた場面が、本局の大きなターニングポイントとなった。

 【1図】実戦の井場さんは白1とはねたのだが、解説の鈴木伸二六段によれば「この手が碁の流れを大きく変えてしまいました」とのこと。黒2のブツカリがこの際の好手で、白7ののち黒8から12と、右上の白を封鎖されてしまったのである。
 この後、白は右上を何とかしのいだものの、周辺の黒を強化したマイナスは大きく、黒A、白B、黒Cに回られ、形勢を損じてしまった。

 【2図】白は1のブツカリが正着だった。黒Aなら白3と渡って成功なので、黒は2で連絡を阻止。白3、5のハネツギで右辺の白を強化したのち7の押しに回れば「白が優勢を維持していました」と鈴木六段。
 1図の後は、趙さんが安定した石運びで押しきり決勝進出。3連覇まであと1勝と迫った。
 惜敗の井場さんは、第1回に続くベスト4止まりで、今回も悲願の初優勝はならず。それでも「ベスト4に進出し、プロの棋聖戦予選への出場権を得る最低限の目標は達成することができました」と前を向いた。

●メモ● 井場悠史さんは27歳の囲碁インストラクター。棋聖戦ファーストトーナメントの魅力は「持ち時間が3時間の碁を打てること」という。かつて藤沢一就八段の下でプロを目指して修業した井場さんにとって、3時間の碁はプロの世界を肌で味わう貴重な機会なのだろう。

【テーマ図】
【1図】
【2図】