上達の指南

第3回ネット棋聖戦 決勝大会特選譜

(4)趙さんV3 西川さん涙

(寄稿連載 / 2017/01/31読売新聞掲載)

 ◇決勝 白 趙錫彬 黒 西川貴敏

 過去2大会で連覇を果たしている趙錫彬さんが、今回もまた決勝進出を果たしてきた。中盤過ぎまでには優勢を確立し、以降は盤石の収束力で押し切るスタイルが定着している。
 対する西川貴敏さんは初の決勝進出。解説の鈴木伸二六段によれば「準々決勝、準決勝とも万全の勝利で、趙さん以上に安定した充実一途の内容で勝ち上がってきました」という。

 【テーマ図】白番の趙さんが1の切りを決行した時、黒2の三々から4のツケが素晴らしい返し技だった。白5の引きに黒6と押さえたのも緩みのない最強手で、鈴木六段をはじめ審判長の王立誠九段からも「プロレベルで見ても非常に感心させられる打ち回し。西川さんは強いです」と賛辞が寄せられた。

 【1図】白1の切りなら黒2の当て。白Aなら黒Bで両アタリという仕掛けである。

 【2図】白1のノビなら黒2から8まで治まる。▲に活力があって隅が気持ち悪いため、これまた白は採択できない。

 【3図】実戦は白1、3として、黒4の抜きを許した。その後に黒8から12まで隅も生きたので、やはり黒の成功だ。

 ここで西川さんが優勢に立ったのだが、30手ほどのちに失着が出てしまい逆転負け。悲願の初優勝はならなかった。
 3連覇達成の趙さんは「まさか今回も優勝できるとは。プロ棋聖戦のファーストトーナメントを勝ち抜き、Cリーグに入りたいです」と語っていた。

●メモ● 第42期棋聖戦ファーストトーナメントに出場したアマチュア選手4人の成績は、西川さんが小野綾子初段から挙げた1勝にとどまった。西川さんは2回戦で片山安雄八段に敗れ、趙さんは山崎吉広九段に、佐々木悠介さんは古谷裕八段に、井場悠史さんは姚智騰三段に、いずれも1回戦で敗れた。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】