上達の指南
(1)模様へ無理に突入し憤死
(寄稿連載 2015/01/06読売新聞掲載) 第1回ネット棋聖戦には多くのファンの参加をいただいた。決勝大会1回戦まではネットで、そして準々決勝からは対面対局で行われた。準々決勝に勝ってベスト4に進出すれば第40期棋聖戦の予選参加資格を得る。4局とも力の入った熱戦が繰り広げられた。
今回は韓国で院生経験を持つ趙錫彬さんと、昨夏の全国少年少女大会で3位入賞した中学3年の松本直太さんの一戦をご覧いただく。講評は決勝大会審判長を務めた山下敬吾九段。
【1図】 黒1の模様拡大に対し、松本さんは白2、4と根こそぎ荒らす方針を選択した。
【2図】 白2から12と居直ったものの、黒13と急所に一撃されてはシノギが見えない。結局この白は憤死し、趙さんの先番中押し勝ちとなった。
黒模様に突入した構想が無理だったわけで、「仮に上辺の白にシノギがあっても、黒にコウ立てが多くできるので、下辺で黒イと切られると、このコウ争いに勝てず、やはり形勢を損じてしまいます」と山下九段。
【参考図】 とりあえずは白1とコウを取るべきだったという。黒Aと謝らせれば大きな利かしだ。
山下九段は松本さんに「上辺には白からBとCという二つの削減手段があるので、この黒模様はさほど大きくないのです。大局観を磨けばもっと強くなれますよ」というアドバイスを送ってくれた。
(構成・佐野真)
●メモ● 準々決勝の残り3局の結果は、伊瀬英介さんが中曽根理樹さんを、井場悠史さんが江村棋弘さんを、西川貴敏さんが佐々木悠介さんをそれぞれ下した。勝者4人は、昨年12月開幕した第40期棋聖戦の予選トーナメントに登場。4人全員が2回戦に進出した。
準々決勝
白 松本直太
黒 趙錫彬