上達の指南
(3)勝負手受け損ね逆転負け
(寄稿連載 2015/01/20読売新聞掲載) 準決勝のもう一局。審判長の山下敬吾九段による講評は、右下での攻防に集中した。
【1図】 先番の西川さんが黒1と打ち込んで戦闘開始。対する白2のハネは疑問だという。
「右辺で戦いが起ころうとしている時ですから、白4とぶつかるのが自然でしょう。実戦は白8までとなりましたが、黒3とはね出された石の存在が大きなマイナスとなっています」
【2図】 その影響が黒2とつけられた時に表れた。白は進退が不自由である。趙さんは苦慮の末に白3と飛び、黒4とつけられた時に白5と戻ったが、「この動きも不自然」という。
白3と飛んだからには、白5ではイと突っ張るのが石の道。白5と戻るなら、3で単に5と打つべきだった。黒6とはねられては、白が形勢を損じた。白3と黒6の交換が、明らかな悪手となってしまっている。
【3図】 白3の切りは成算あっての行動ではないが、ここから紛れを求めるよりない。黒の有利な戦いであることは間違いないのだが、黒8は「地を気にしてしまいました」と山下九段。▲は重要な石ではないので「中央の力関係を重視して黒9の飛びが勝った」とのことである。
それでも黒12まで、総じて好調な石運び。決勝進出が目前まで迫っていたのだが、こののち中央における白の勝負手を受け損ない、逆転負けを喫してしまった。西川さんの残念譜。
(構成・佐野真)
●メモ● 西川貴敏さんは23歳。仲邑信也九段とその父が主宰する大阪の子供囲碁教室で腕を磨いた。日本棋院関西総本部の院生としてプロを目指した時もあった。その頃、週刊碁主催の若手棋戦で入賞し、村川大介(王座)、李沂修(七段)らと中国遠征を経験している。
準決勝
白 趙錫彬
黒 西川貴敏