上達の指南

第1回ネット棋聖戦・決勝大会特選譜

(4)コウ争い制し初代王者に

(寄稿連載 2015/01/27読売新聞掲載)

 第1回大会は準々決勝から、東京・銀座で対面対局で行われた。決勝に勝ち残ったのは伊瀬さんと趙さん。2人ともアマ棋戦で優勝などの実績がある。講評は審判長の山下敬吾九段。

 【1図】 左下で始まった競り合いが中央へと波及し、先番の伊瀬さんが黒1と切ってコウを仕掛けた。黒3の切りをコウ立てに5と取り返した。

 【2図】 黒が8と抜いて解消し、白が7、9と右辺を連打する振り替わりとなった。この収支は「白に軍配が上がります」と山下九段。黒のつまずきの元は1図の1と切った手にあった。

 【参考図】 黒1と白2を換わってから、黒3とこちらを切るべきだった。白4のコウ取りに黒5、11という絶好のコウ立てがあり、白14に黒15と抜いてコウを解消する。実戦とは雲泥の差。「これなら黒も十分に戦えたでしょう」
 コウ争いでポイントを挙げた白が優勢を確立した。その後はまさかの見損じもあってひやりとする場面もあったが、4目半差で逃げきった。
 初代ネット棋聖となった趙さんは、優勝トロフィーを手に満面の笑みだった。韓国出身の32歳。プロにはなれなかったが、ドイツで囲碁普及に努め、2008年に来日。現在は名古屋で碁会所を主宰し、子供を教えている。その中から、昨年、入段してプロとなった六浦雄太初段が育っている。
(構成・佐野真)
(おわり)

●メモ● 第2回ネット棋聖戦が開幕した。1年を4シーズンに分けてリーグ戦を戦う。トーナメントとは違い、じっくりと自分の実力を試せる。最上位SAクラスの上位4人は第41期棋聖戦予選に参加できる。シーズン2(3月開始)以降の参加申し込みは、現在、受け付け中。

決勝
白 趙錫彬
黒 伊瀬英介

【1図】 5(2の上)
【2図】 6(3の上)
【参考図】 7(4の上)、10(4)
13(4の上)