上達の指南

第4回ネット棋聖戦 決勝大会特選譜

(1)小野さん大物食いならず

(寄稿連載 2017/10/17読売新聞掲載)

 第4回ネット棋聖戦・SAクラス決勝トーナメントの準々決勝が9月30日に東京・銀座の特設会場で行われ、勝ち上がってきた8人が対面対局で対戦した。

 大会3連覇中の趙錫彬さんをはじめ、西川貴敏さん、井場悠史さんという上位常連は今回も健在ながら、浜崎公輔さん、小野拓馬さん、石田太郎さんの3人が初のベスト8進出。その中から小野さんが井場さんに挑んだ一局を、小池芳弘二段の解説で紹介する。

 小野さんは決勝トーナメントの1回戦で、アマ名人の大関稔さんを下す金星をあげた。再度の大物食いなるかに、注目が集まった。

 【第1譜】黒3、11と、小野さんは意欲的な立ち上がり。「相手が強いので結果は求めず、自分の打ちたい手を掘り下げたいと思いました」とのことで、黒33まで、形勢はまずまずと見ていたようだ。ただし小池二段からは「黒29ではイ、白32、黒33と運んだほうが、上辺の白を強化していないので勝ったでしょう」とのアドバイスがある。

 【第2譜】白64ではすぐに68、黒69、白70が正着だった。

 【参考図】実戦の黒67で、黒1と上辺を備えられたら「白がやり損ねた感があり、黒が打てそうな碁形でした」という小池二段の指摘があったからだ。

 実戦(第2譜)は黒67と受けてしまったため、白68に回った井場さんが優勢を築き、そのまま2目半勝ちを収めた。

●メモ● 小野拓馬さんは大阪市在住の34歳。これまで世界アマチュア囲碁選手権大阪府代表などの実績がある。ネット棋聖戦は第2回以来の決勝トーナメント進出となった。絵理夫人もアマ強豪。夫婦で、人工知能の棋譜を研究した共著も自費出版している。

 準々決勝
 白 井場 悠史
 黒 小野 拓馬

1回戦で金星をあげた小野拓馬さん(左)が、上位常連の井場悠史さんに挑んだ
【第1譜】
【第2譜】
【参考図】