上達の指南
(3)井場さん逆転で王者破る
(寄稿連載 2017/10/31読売新聞掲載)第1回大会から無敵の3連覇中だった趙錫彬さんに、とうとう土がついた。
歴史的(?)な白星を挙げたのは井場悠史さん。本棋戦では上位常連となっていたが、ベスト4が最高成績で、趙さんにも2度負かされ「苦手意識が芽生えかけていました」という。それだけに「趙さんを破っての決勝進出は本当にうれしいです」と興奮気味に語っていた。
劣勢の流れの中、辛抱が実って逆転を果たした一局を、小池芳弘二段の解説で振り返る。
【第1譜】黒39から41、43と当てついだ方針が苦戦の原因だったか。白44から下辺の黒模様を消され、白60と左辺の好点に回られた時点では「黒が苦戦でしょう」と小池二段。
【第2譜】白78から88で右上隅を荒らし、左辺の白102、104に回り、趙さんも「優勢を意識していました」という。対して井場さんは黒105、107と噛み取って追走。辛抱の時期であった。
白110が失着。黒111と換わったことで、黒から123に切りやすくなったのである。白112に黒113のフクラミが好手で、さらに黒117の押しが白のダメを詰めて好感触。この時点で井場さんは「好転したのではないか」と感じていたという。
【参考図】白110では、白1と飛んで黒2と換わり「白3と囲うくらいで十分でした」と小池二段。
実戦は黒が127と抜き、盤面10目ほどリードした。最後はきっちり2目半を残した。
●メモ● 4連覇を逃した趙錫彬さんは「残念ですが、これで今後は気楽に打てます」と前向きなコメント。棋聖戦のファーストトーナメントでのこれまでの最高成績は2回戦進出だった。「目標はそれ以上」と抱負を語っていたが、1回戦で関西棋院の原正和二段に敗れた。
準々決勝
白 趙 錫彬
黒 井場 悠史