上達の指南
(2)石田さん 奔放な石運び
(寄稿連載 2017/10/24読売新聞掲載)過去3年の大会では、趙錫彬さん、西川貴敏さん、井場悠史さんの3人が安定して上位進出を果たし、3強を形成した感がある。従って今大会は、誰が趙さんの4連覇を阻止するのか、3強に割って入る新星は現れるのかという点に注目が集まった。
9月30日の準々決勝で3強はそろって勝利し、強さを見せつけたが、ベスト4のもう一枠に入ってきたのが21歳の大学生、今年の学生本因坊戦で準優勝した石田太郎さんだった。
物怖(ものお)じしない強気な性格は盤上でも同様。10月1日の準決勝、西川さんとの対戦でも、奔放な石運びを披露してくれた。
【第1譜】白22、24から26について、石田さんは「読みの裏付けはなく、感覚だけで打ちました」とのこと。白50までまずまずと見ていたようだが、解説の小池芳弘二段からは「白32は単に白34だったでしょう。黒33で1図の黒1と打たれていたら、白が苦しかったように思います」との指摘があった。
黒51から53、55の運びが碁を苦しくしたか。白56の時点で石田さんは「急に良くなった気がした」と振り返っている。黒51で2図の黒1と三々に入るか、黒53でイ、白ロ、黒ハが勝った。
【第2譜】白70では75、黒イ、白ロが正着だった。実戦は黒73、75の3子取りが大きく、碁は振り出しに戻った。
黒77で左下隅のハに回っていれば好勝負だった。実戦は白が78に回りリード。そのまま押しきって4目半勝ちを収めた。
●メモ● 昨年の準優勝に続いてベスト4へ進出し、プロ棋聖戦予選への出場切符を手にした西川貴敏さん。悲願の初優勝はならなかったが、「今期は負け碁を拾った幸運も多かったので、ベスト4という最低限の目標達成で良しとします。プロを相手に一つでも多く勝てるように頑張ります」と語った。
準々決勝
白 石田 太郎
黒 西川 貴敏