上達の指南
(4)初出場 石田さんが優勝
(寄稿連載 2017/05/30読売新聞掲載)井場悠史さん、石田太郎さんとも、初の決勝進出となった。井場さんは準決勝で趙錫彬さんの4連覇を阻止した白星が光り、石田さんは初出場ながら奔放な打ち回しと勝負強さで勝ち上がってきた。
【第1譜】先番の井場さんの苦戦の原因は、黒29とコウに弾いた手だっただろうか。実戦は白34に黒35と解消したが、白38と切られては不満。従って黒29では「1図の黒1と膨らみ、5まで下辺を構えていた方が勝ったでしょう」という小池芳弘二段の指摘がある。
ただし実戦は白44が追及不足だった。この手で白45に押さえて黒イと換わり、それから白44なら、はっきり白良しだった。
また白76から左上の形を決めた構想もやや甘く、小池二段は2図を推奨している。これなら絡み攻めで好調、白優勢だった。実戦は黒が89の好点に回り、互角の形勢に戻している。
【第2譜】細碁模様の中、白42のツケに対し手を抜き、黒43と中央を打った手が敗着となった。ここは黒45と応じておくべきで、実戦は白44と連打され、この部分に白地がついて勝負が決まった。この後は石田さんが堅実な収束を見せ、白の8目半勝ちで終局した。
優勝した石田さんは院生経験もある大学生。「院生時代より今のほうが伸び伸び打てている気がします」と躍進の要因に触れ、この後のプロ棋聖戦予選については「プロと真剣勝負ができることがうれしい」と抱負を語った。
(おわり)
●メモ● 決勝大会の審判長を務めた小林覚九段は「一手一手にうなずける手が多かった」と賛辞を送った。その一方で「プロの棋聖戦予選でぜひ勝ち上がり、Cリーグ入りをしてほしい。そのためにはもうひとつ踏み込みが必要。今日の内容ではちょっと苦しいかな」と、励ましとともにレベルアップを求めた。
決勝
白 石田 太郎
黒 井場 悠史