上達の指南

第5回ネット棋聖戦 決勝大会特選譜

(1)杉田さん 積極策で優勢

(寄稿連載 2018/10/17読売新聞掲載)

 第5回ネット棋聖戦の準々決勝から決勝戦が9月29、30日に行われました。特選譜4局を、皆さんの棋力アップにもつながる場面も含めて寺山怜五段に解説していただきました。

 今回は準々決勝から、若手強豪の対決となった、竹田和正さん(24)と杉田俊太朗さん(21)の一局です。竹田さんは学生十傑戦で準優勝の経験があり、杉田さんは昨年の学生最強位です。

 【1譜】序盤は黒33が疑問で、1図の黒1と下がるところでした。上辺の白を攻めることができますし、黒33がなくても右辺の白への攻めは利きそうです。実戦は白34から形を決めた白が厚くなり、白52の打ち込みも好手で、右上の攻防で、白がリードを奪いました。でも、その後に黒が巧みに上辺でコウを仕掛け、今度は白86が、相手のコウ材を増やす疑問手でした。黒101とコウを解消して黒が巻き返しました。

 黒111の局面が岐路です。

 寺山「地を数えてみると、白地は右辺が約22目、左下が約5目、左上、右上を合わせて35目強です。黒地は確定しているのが45目強。左辺はまだ決まっていません。この状況で、白はどう考えるのがよいでしょうか」

 寺山五段のおすすめは、2図の白1のツケです。白5まで下辺の白地は20目。左辺の黒は薄く、なかなか10目に届きません。「地を取って、白十分と判断するところです」

 【2譜】実戦は、積極策に出ました。白112は、左上の黒を攻めて局面を動かそうという手です。黒113と入られて地はかなり損ですが、白118と打ち込みを誘って戦いを広げ、左上の弱い石もにらんだ難しく遠大な作戦でした。

 そして、ご紹介したいのが、白150の好手です。Aの切りや、中央の薄みを狙えます。攻めを主体に打ってきたことが実を結び、白152から優勢に持ち込みました。

●メモ● この後、白が決め手を逃し、黒が追い込むものの届かず、杉田俊太朗さんの半目勝ち。寺山怜五段は今大会を「皆さん、優勢になっても緩まないですね」と振り返り、「竹田さんは着実に打ち進め、読みもしっかりしています。杉田さんはどんな碁もこなすタイプ。強い」と両対局者の印象を語った。

 準々決勝
 黒 竹田  和正
 白 杉田 俊太朗

【1譜】
【1図】
【2図】

【2譜】