上達の指南
(3)栗田さん 冷静さ光る
(寄稿連載 2018/10/31読売新聞掲載)今回は準決勝の杉田俊太朗さん(21)と栗田佳樹さん(19)の一戦をご紹介します。
今年のアマチュア囲碁名人戦で優勝した栗田さんは院生経験があり、杉田さんも「外来でプロ試験を4回受けています」という若手強豪対決です。
【1譜】解説の寺山怜五段は、「栗田さんは石が踊らない。大人な碁を打ちますね」と本局を振り返りました。
例えば、白28ではAとツケて攻めていきたくなるところですが、白32の抜きまで一歩一歩進めました。白38もじっくりしたノビ。「黒に不満のない39の抱えと換わるので、なかなか打てない手です」
上辺の攻防に移り、黒53の割り込みが意表をつきました。白55の切りには黒Bから進出できます。また、黒53で55、白Cとなった後に黒53と出ても、白Dと引かれます。実戦を利かしと見た、鋭い手でした。
寺山「この碁はこのあたりがハイライト。黒55のとき、白は地か攻めかの二択です。左辺は目数がわかりません。そういうときは他の地を数え、逆にここに何目必要かを割り出して作戦を立てるのがわかりやすい考え方。現状では20目必要です」
1図の白1と攻めを残して打ちたくなるところですが、黒6までを想定すると、左辺の白地ははっきりせず、上辺の白も攻められる恐れがあります。
【2譜】白56の押しが「形勢判断に基づいた冷静な手」と寺山五段。以降は黒67までほぼ一本道で、「白68から70が素晴らしい感覚でした」。黒71に白72とケイマにはずしたのも好手です。上辺の黒地も約10目増えましたが、白80まで左辺には立派に30目あり、白84までさらに増えそうです。
その後の折衝の中、黒はどこかでAに回っていれば、「まだ難しい形勢だった」と寺山五段。白112の好点に回っては白が優勢を築いたようです。
●メモ● 本局は白の6目半勝ち。寺山五段は「最初は黒も楽しみの多い碁だったと思うが、後半は白が寄り付いて厚みをうまく生かしました」と振り返る。棋聖戦予選に向けて杉田さんは「プロの先生との正式な対局は初めてで大変うれしい。3時間の碁も楽しみ。いろいろ教わりながら打ちたい」と語った。
準決勝
黒 杉田 俊太朗
白 栗田 佳樹