上達の指南
(4)栗田さん しのいで初V
(寄稿連載 2018/11/7読売新聞掲載)決勝戦は、世界アマ日本代表の村上深さん(34)とアマ名人の栗田佳樹さん(19)というアマチュア最高峰の好カードとなりました。村上さんは「これまで1勝1敗ですが、直近は負けているので、リベンジのつもりで」と臨みました。
【1譜】序盤早々、左上で難解な戦いに突入しました。白28は29のトビのほうが冷静だったと寺山怜五段。「でも一番の問題は白40。白46にコウ材を作ってからコウを仕掛けるところで、村上さんの力からすると、考えられないうっかりでした」
黒47とコウを解消して、栗田さんが優勢を築きました。
黒55は、「黒64くらいでも黒十分」(寺山五段)でしたが、一番厳しい手を選びました。
白74のところを、寺山五段はポイントの局面にあげました。「黒は戦いを仕掛けていったので、地でリードできてはいない局面になっています」
例えば、ここで黒Aと地を取りにいくと、白Bで、下辺左側の黒が心配になってきます。黒Cと守れば白もDと逃げ、上辺の白に入りにくくなります。
【2譜】黒75、77は、攻めで主導権を握ろうという手で、「素晴らしい判断でした」と寺山五段。「白1子を抜いて下辺の黒が安心したため、例えば左下の白も黒Aから荒らせます。目に見えないプラスがどんどん出てくるのが攻めの効果です」
黒87が利くのも攻めの効果。黒89から地をかなり増やし、白は下辺を取りにいくしかない展開になりました。
【3譜】白が厳しく攻めましたが、黒121が、立会人の王立誠九段が「すごいシノギの筋でした」と称賛した一手。白122で127なら黒Aの切りを見ており、その後、白が辺でがんばれば中央の白が助からない形です。黒147までうまくしのいで、黒の中押し勝ち。栗田さんが初優勝を手にしました。
(おわり)
●メモ● 栗田さんは「途中で悪くしたが、運がよかった。優勝できてすごくうれしい」と喜びをかみしめた。棋聖戦への抱負を、栗田さんは「自分としていい碁が打てれば」、村上さんは「持ち時間3時間の碁でプロと対局するのは初めて。ファーストトーナメント突破を目指して頑張ります」と語った。