上達の指南
(2)状況見極め 捨て石作戦
(寄稿連載 2018/10/24読売新聞掲載)今期のネット棋聖戦は若手の台頭が目立ちました。その中で、第2回から4年連続ベスト8に勝ち上がり、2度目のベスト4にも入った諸留康博さん(50)の活躍が光ります。今回は、諸留さんと今年の世界アマチュア選手権日本代表、初出場の村上深さん(34)の準決勝戦をご紹介しましょう。
【1譜】左上は「初めてみる変化で、一手一手考え抜かれた手順をたどりました」と解説の寺山怜五段。白26は、様子を聞き、黒Aの抱えなら左辺の側から利き味を残し、黒27のツギなら実戦のようにさばいて打とうという手です。
「白40まで一応白は治まりました。黒も手厚くなり、後にBのノゾキからの攻めが楽しみ。いい分かれだと思います」
黒55とノゾいた場面が、一つの岐路でした。
1図の白1のツギが普通に見えますが、黒2と封鎖されると生きなければならず後手を引きそうです。そこで全局を見ると、中央の白はまだ弱く、黒の石は補強されました。すると、次に黒12あたりに裂いてきそうです。白13と中央を守れば、黒14から隅は簡単に手にされます。
【2譜】「1図の進行を避け、白56から58と右辺の白を逃げていったのが村上さんの素晴らしい判断でした」と寺山五段。
「黒63と取られて上辺の黒地もかなり大きいのですが、代わりに右辺の黒を攻める展開になり、白の弱い石がなくなったのが大きなポイント。右辺の白地も大きくなりそうです」
白66から戦線を拡大していき、形勢の揺れ動く難戦に突入しました。白94を見て「読み負けたと思いました」と局後に諸留さんは振り返っていました。
「難解な碁でしたが、ここからのコウ争いで、白がうまく立ち回りました」と寺山五段。結果的には左上を捨てて、右下一帯を大きくまとめ、白番中押し勝ちとなりました。
●メモ● ベスト4に勝ち上がった両名には第44期棋聖戦予選への参加権が授与される。村上さんは「棋士との対局は、自分の力を試せ、モチベーションがあがります」と今大会への出場理由を語り、諸留さんは「せっかく3時間考えられるので悔いのないようにしっかり確かめて打ちたい」と抱負を語った。
準決勝
黒 諸留 康博
白 村上 深