上達の指南

信田成仁六段の「大事な石つまらない石」

(3)周りの石 活用し捨てる

(寄稿連載 2016/11/01読売新聞掲載)

 石を捨てる時は周りの石に注意を払いましょう。周囲の石をうまく活用できれば、より効果的に捨てることができます。

 【テーマ図】白イと嫌な所を切られたところです。▲7子は大事な石でしょうか。もうお分かりですね。喜んで捨てるのです。  でもせっかくですから、■2子と□3子の関係を利用したうまい捨て方を考えてみましょう。力の見せ所です。

 【正解図】黒1の切りがスタートです。白2で当たりとなりますが、黒3、5とぐいぐいと行きます。それから黒7から9と捨てます。黒13まで伸び伸びした大地が完成します。

 白14と切られたら▲1子は捨てましょう。すでに役目を果たした石です。白20に黒21も気持ちがいい。黒の立派な姿に対し、白の得た利益はわずかです。黒の勝勢も確定した感じです。捨てる時は周りの石を徹底的に利用したいものですね。

 【失敗図】7子ともなると大きい、とても捨てられない、と考えると黒1と助けに行ってしまいます。こうなると黒3から13まで二線を目いっぱいはわされます。このあたりで、助けたのはまずかったと、気がついてももう遅い。白14と飛び出されては黒模様は消滅です。この白はとても取れる石ではありません。正解図と比べれば黒の失敗は明らかです。石の価値は大きさではありません。捨てる勇気を身に付けてください。

●メモ● 信田六段はマラソンを走る。知人の勧めでランニングを始めたのは59歳のとき。60歳でフルマラソンに初挑戦し、完走した。これまで12回、フルマラソンを走り、棄権は一度だけ。最高タイムは5時間5分。普段の練習走が好きだという。「走っていると自分の時間がずっと続く感じがして」

【テーマ図】
【正解図】
【失敗図】