上達の指南

大場惇也七段の 三々入りの新常識

(1)ハネツギ打たない利点

(寄稿連載 2018/01/09読売新聞掲載)

 人工知能(AI)の登場で、今まで常識だと思われてきた打ち方が、見直されています。今回は「三々入り」の新しい常識をご紹介しましょう。

 【1図】は、AIが黒番の実戦で、私が知る限り初めて、「新しい考え方の三々」が打たれた対局です。黒19が衝撃的な三々でした。

 白4の星の石に対しては、AかBに掛かるのが常識でした。皆さんも、黒19の三々に入るのは、CとDのあたりに白の開きがある場合で、開きが何もない局面ではよくないと教えられたのではないでしょうか。

 続いて、【2図】の白1から11が、三々入りからの基本定石とされていました。こうなると、黒の実利より外回りの白の厚みが勝ります。そこで、黒19はよくないとされていたのです。

 ところが、実戦は、【3図】の白1から7のとき、黒8と別の場所に向かいました。黒Aから白Dまでハネツギを打たない方がよい、という新しい考え方でした。

 【4図】は、少し進んだ局面です。白が△と開いたときに、黒1と打ち込みました。もし、黒Aから白Dが打たれていたら、白が強いため、黒1とは入っていけません。でも実戦は、黒5まで楽々と下辺の白を割ることができました。これが黒Aから白Dを打たない利点です。

 この対局から1年ほどしかたっていませんが、今ではプロの対局で早い段階で三々に入ることが増えてきました。

●メモ● 今回取り上げた棋譜は、「アルファ碁」がインターネット上で対局したもの。ネット上には「Master」などの名前で登場し、一昨年から昨年にかけて、世界のトップ棋士に60連勝したことは有名だ。大場七段も「Master」の全対局を、驚きとともに並べたという。

【1図】
【2図】
【3図】
【4図】