上達の指南
(3)モタレ攻めに持ち込む
(寄稿連載 2015/06/16読売新聞掲載) 私の教室の生徒さんの碁を見ていると、自分と同じか、した手相手だと伸び伸び打てるのに、うわ手との置碁になると途端に手が縮こまってしまう人がいます。
相手の力量によって自分の打つ手を変えてはいけません。相手が誰であっても、盤上の力関係に即して考えれば打つ手は同じはずです。
【テーマ図】 5子局。白1の打ち込みはうわ手の常とう手段。した手が相手なら「生意気な」と思うのに、うわ手に打たれると「隅の▲がピンチ」となってしまいませんか。
【1図】 隅を生きることばかり考えると、黒1、3という最悪手を打ってしまうことになります。白2、4とされて黒はサカレ形。▲が完全に痛んで、すでに置き石一つ分は損をしています。
【2図】 黒1のツケを犠打に3から5、7と渡る。実利も稼いで大成功と思っている人も多いようですが、中央で白にポン抜きを許したのは大きな罪。これも失敗の代表例なのです。
【3図】 黒1のコスミが正解。白2、4に黒5、7とつけ伸びて典型的なモタレ攻めに持ち込みます。このあと黒Aの封鎖とBの切りが見合いで大成功。△の無理を見事にとがめました。
【4図】 黒1と飛ぶのも立派。自身が中央に進出し、左右の白を分断する好手です。
AとBも同じ理屈で正解です。盤面を大きく見渡し、石の力関係について考えてみましょう。
●メモ● 置碁でした手が負ける典型的なパターンが「封鎖されてしまうこと」と大垣九段は言う。封鎖されると石の生き死にが問題となり、詰碁の力が求められることになる。これはうわ手に軍配があがる。だからこそ「自分の石を中央に進出させ封鎖を避けることが大切」と力説する。