上達の指南
(4)まず自分の足元を固める
(寄稿連載 2015/06/23読売新聞掲載) ここまで、うわ手相手でも自分の有利な状況下では堂々と戦いましょうという話をしてきました。今回は少し広い局面です。やはり黒と白の石の力関係を見極めて、着手を選択してください。
【テーマ図】 3子局。黒番です。焦点は上辺。どのような構想で臨みますか。
【1図】 攻めっ気の強い方は黒1のボウシから3のケイマが浮かんだことでしょう。しかし白4と肩を衝(つ)かれてみると、苦しいのは▲のほう。攻めているつもりだったのが、攻められる立場となっています。
状況判断を誤った結果と言えましょう。白を攻められる身分ではなかったということです。
【2図】 上辺の力関係を冷静に見ると、決して黒優位ではないのです。そういう局面では、まず自分の足元を固めることが大切です。
それが黒1の二間飛び。自分が中央に向かって進出しておけば、力関係で劣勢となることはありません。次に黒Aのボウシが、今度こそ厳しい。
【3図】 白は1と飛ぶくらいのものです。それから黒2、4と進出していけば、碁盤下半分における黒模様の拡大にも役立ちます。3子の貯金をがっちりとキープし、これ以上ない序盤戦です。力関係で優位と言えない状況では、自身の安定が最優先です。これが置碁に限らず、囲碁における棋理というものです。
(おわり)
●メモ● 盤上の力関係を正しく把握できていれば、「石の方向性が見えてくる」と大垣九段。これが棋理というもので、方向さえ合っていれば、多少の部分的ミスはあっても、置石の利を大きく損なうことはない。「どう打ってもいい序盤でこそ、こうした考えを着手決定の指針としてほしい」