上達の指南

小川誠子六段の「アマの心配症解決策」

(4)「なんとなく不安」冷静対処

(寄稿連載 2005/08/15読売新聞掲載)

 本欄も、早くも最終回を迎えました。最後にぜひ触れておきたいことは、碁の効用についてです。
 私はお医者さんの囲碁ファンの方を多く存じ上げていますが、どなたも、脳梗塞(こうそく)などを患った方のリハビリに囲碁の効用を挙げられています。長野県のある町では、脳障害を受けた方のリハビリに囲碁を活用しているという新聞の記事を読んだこともあります。碁がお役に立つなんて、とてもうれしい話です。

 【1図】 アマチュアの方の恐怖症の最後は、大ゲイマに対する白1の三々入りです。
 黒2から4と伸びる定石はご存じのとおりですが、意外なのが白9に対して黒10と伸びる方がいることです。しかも有段者の方で――。

 【2図】 今さら申し上げるまでもありませんが、白1のハイには黒2と押さえる一手です。押さえていれば、後に黒イ以下白ニまで隅のヨセが大きいのです。これを1図の黒10伸びでは、このヨセが利かず隅の白地が違います。

 【3図】 黒1と押さえると、白2の切りがなんとなく不安なのでしょう。
 しかし冷静に考えれば、白2の切りには黒3のカケから5の手があり、白は取られる運命にあるのです。
 この「なんとなく不安」が無用な後退をさせるのです。

 【4図】 この形は切る手がないのですから、白は1と飛ぶくらいで、黒2のツケから4までが定石です。これなら黒はしっかりしていて、何の不安もありません。
 また白1でイとのぞいてくれば、黒ロとはね、白ハの切りに黒ニと受けていて、これも黒は何の不安もありません。

 【5図】 同じ理屈で、▲の小ゲイマのときでも、白3のハイには黒4と押さえて大丈夫です。黒8に続いて白イと切ってきても、黒ロのカケで白は逃げられません。
 心配は早く解決し、のびのびと碁を楽しんでください。(おわり)

【1図】
【2図】
【3図】
【4図】