上達の指南
(3)戦いは石の力関係考えて
(寄稿連載 2007/06/04読売新聞掲載) 布石の終わり、中盤戦の入り口では、お互いの石の力関係を考慮に入れて着手を決めましょう。
戦いを起こすのであれば、まずは戦いやすいところで仕掛け、局面を有利に進めること。中盤の主導権を握るために肝心な心構えといえるでしょう。「善(よ)く戦うものは、勝ち易きに勝つ」ですね。
【テーマ図】 黒番です。大場を打ち切り、そろそろ戦いを起こしたい場面です。右下一帯の白陣に仕掛けたい。黒AからCのどこから戦いを起こしますか。
【正解図】 黒1の打ち込みが正解です。着手を選ぶ際のポイントは、右上黒がしっかりした強い石であること、そして右上白にはまだ弱点が残されていることの2点。黒1と打ち込んだ瞬間、右辺での力関係は黒が優位に立っているんです。右辺の白地を荒らしつつ、△への攻めを狙う、一石二鳥の良手です。
白2に黒7までとび合って、右辺白への攻めを見ながら、黒Aと右上白への寄り付きも視野に入っています。将来二つの白を絡み攻めにできれば、最高の展開ですね。これは黒が満足の進行。
【失敗図1】 うっかり黒1に手が行ってしまう人もいるかもしれません。たしかに、右下隅のごく部分的な形の上ではひとつの急所にあたります。でも、この場合は喜んで白2と受けられてしまうでしょう。△への応援を送る意味。黒3から5と下辺を割ることはできても、白6と大きく攻められるマイナスの方が黒にとってはつらい。この黒の一団が弱い限り、右上白へ寄り付く狙いも遠のいてしまうでしょう。
【失敗図2】 黒1も、同じこと。下辺の白地をいくらか減らしたところで、白8まで両サイドを固めながら攻められては、黒がかえって損をしています。
●メモ● 小学2年生を筆頭に、3人の子育てに追われる岡田六段。普段は碁石に触れる時間もなかなか取れないそうだ。青木喜久代八段ら同世代の女性棋士による“ママさん研究会”も「それぞれ育児がいそがしいので」現在は休止中という。