上達の指南

奥田あや三段の「シンプルが一番」

(2)さらりと開いて不満なし

(寄稿連載 2012/06/12読売新聞掲載)

 手順が長い難解定石は、相手が違う手を打ってくると困ってしまうものです。簡明定石なら覚えるのも楽ですし、悩みも少なくてすむでしょう。

 【テーマ図】 黒1につけられると、つい白Aとはね出したくなります。すると黒3に切られて大型定石が始まりますが、シチョウの問題もあって、どう変化されるか分かりません。
 最近はやっているのは、白2と単に開く打ち方です。黒3のブツカリには白4と下がります。黒5と飛んで隅を守れば、白6と左辺に開きます。黒7に、白8と開いて白は足早です。上辺と左辺の両方打っていますから、白に不満はありません。

 【1図】 途中、黒1とはねてくれば、その時は白2とはね出します。
 黒5と抱えて白1子は取られますが、これは捨て石です。白6の切りから8と隅に伸び込んで、白が働いた形です。

 【2図】 テーマ図の黒5で、1と中に飛んでくれば、白2と上辺に開くのがいい手です。黒3とかけるのが筋ですが、ここはしばらく放っておいてもいいでしょう。ただし、黒3でAと挟んでくるなら、白Bと飛んで堂々と戦います。

 【3図】 白2の開きに黒3とかけるのも一つの筋です。これには白4のコスミが粘り強い形で、黒5のコスミツケから7と下がって隅を守るくらいです。白6と伸びた形がいいですし、次に白8の急所に迫るのが有力です。

●メモ● 奥田三段は、NHK杯で棋譜の読み上げを担当しているので、顔も声もファンにはおなじみである。収録前はメイクさんに奇麗にしてもらえるので、楽しみにしているとか。スタジオは機材の保護のため、かなり室温を下げている。季節に合わせて夏は薄着だが、実はけっこう我慢している。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】