上達の指南

奥田あや三段の「シンプルが一番」

(3)見慣れた定石に戻り十分

(寄稿連載 2012/06/19読売新聞掲載)

 一つ定石を覚えると同じパターンに陥りがちです。しかし周辺の配石によって、選ぶ定石も工夫しなければなりません。頭を柔軟にして選択肢を広げましょう。

 【テーマ図】 白1の大ゲイマガカリに、黒2と挟むのはよくある形です。白3と三々につけられたときが分岐点です。

 【1図】 白1のツケには、黒2とはね出すものと決めつけていませんか。白3と切られた後、黒4から6と当てて8とつぐのが定石ですが、これでいいでしょうか。白7と伸びた白は下辺で力を持つことになりますから、▲2子が働かなくなっています。一つの定石でいつでも事足りるわけではないのです。

 【2図】 黒1と伸びて、白2と渡らせるのがお勧めです。黒5のケイマまで、外側を止める定石がぴったりです。下辺の黒模様がいい姿です。よく見ると▲が黒1の星にあった場合に出来る定石に戻っています。これで十分なのですから、分かりやすくていいと思いませんか。

 【3図】 白が2図を避けるなら、白3と横につける手があります。黒4とはねるのが急所です。白5のハネに黒6と二段にはねる形を覚えておきましょう。黒10の伸びまで、下辺の黒がしっかりしました。相手の変化に応じて、柔軟に打ちましょう。白11と挟んで、戦いを目指すかもしれませんが、黒2をすぐ動き出して戦いに応じるか、しばらく放っておいてチャンスを待つかは、あなたの好みで決めればいいのです。

●メモ● 棋士は毛筆でサインすることが多い。奥田三段も書道を習っている。加えて最近は韓国語を勉強している。韓流ブームの影響ではない。韓国で開催される棋戦に出場するため、出掛ける機会が増えたので覚えたいと思ったという。棋士同士の交流にも、言葉が分かるにこしたことはない。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】