上達の指南
(4)後手でもしっかり治まる
(寄稿連載 2012/06/26読売新聞掲載) 大型定石は、形が決まる意味はありますが、大きいだけに状況を見誤ると大変です。形になずんで、同じパターンを繰り返しているだけでは、上達は望めません。
【テーマ図】 黒1とケイマに掛けるのは、よくある形です。白2のハイに黒3と伸びて、白4の飛びまではこうなるところです。ここでどう打つのがいいのか、考えてください。
【1図】 黒1から押していくのは、白4まで伸びられて、先に実利を与えます。
かわりに黒5と挟んで攻めたいのですが、白6、8と飛び越されて楽に逃げられます。黒は上下に分断されて弱くなっていますから、自ら苦しくしたようなものです。
【2図】 黒1と三々につけて、隅で治まるのがいい手です。白2から4と飛ぶくらいですから、黒3と戻ってから7の下がりまで、後手でもしっかり治まりました。先に△の挟みがある場合は黒1が有力です。
【3図】 黒1のツケに、白2から4と出るのは無謀です。黒1の1子は取れますが、黒5から7と切る手が成立します。白8とついで隅を守れば、黒9でシチョウです。
定石は万能ではありません。状況に合った打ち方を探してください。また、難解定石を覚えれば強くなれるというものでもありません。簡明定石でも十分互角になりますから、分かりやすく打つことをお勧めします。
(おわり)
●メモ● 囲碁の上達法は、手筋でも詰碁でも「自分が好きなことをやるのが一番」と、奥田三段は言う。これなら間違いないという勉強法があるわけではないので、好きなことを楽しみながら続けるのがいい。苦しみながら欠点を直そうとするより長所を伸ばす勉強法がお勧めとのことである。